年末に弟に3万を投資する
────2018年12月29日
なんとか仕事を納めて、実家である福岡に帰省した私はもうめちゃんこ暇だった。
帰ってきたのはいいものの、特にやることは何もない。仕事で使うものの勉強とか、まだ行ったことのない場所に行ってみるとか、考えれば色々と案は出てくるが、結局どれも実行することは無い。まぁ、休みなのだから何もしないことをするのが良いのかもしれないが、さすがに何も無さすぎるのも退屈である。人間ってホント罪な生き物・・・
たわむれに弟と話そうと思い、
「最近なんかハマってることとかあるの??」
と聞くと、
「う〜ん、パチスロかな〜?」
と、かなり香ばしい回答が返ってきた。
これこれこれだよ!!!
こういう展開を待っていたんだよ!!
世間一般的に趣味として嫌われているものとして、風俗・ギャンブル・(マジの)アイドルの追っかけなどが挙げられるが、我が弟がその一つに当てはまっていた!これらの趣味は「趣味なんだから別に好きにやれば良いじゃん!」という言説があるのはもちろんだが、その負の側面はどうしても拭いきれないものがある。
ただ、これらに傾倒する人間というのは、それこそ「人生を掛けたギャグ」と言っても過言ではない人々で、その口から発せられるエピソードが面白くないわけがない。自分みたいに安全志向で生きているような人間にとって、そういった人々の生き様は時に眩しく映るものなのである。
しかし、やはり身内だから「程々にしといてくれよ・・・」という心配半分、「おいおい!一体お前はどの程度の勝負師なんだい!?」という期待半分で、その両者の天秤で揺れる私のこの状況はもはやギャンブルだった。
「パッ、、、パチスロ!?えっ、それはどのくらいハマってんの?まさか、借金とかあるんじゃ・・・?」
「いや、借金とかはないね。今は無一文だけど。最高で月60(万)勝ったことがあるくらいかな〜」
おいおいおい、ウチの弟、なかなか剛腕のギャンブラーらしいぜ!!
────2018年12月30日
私と弟は早朝のパチスロ店の前に来ていた。
何を隠そう年明け前の大勝負である。私は弟に3万を投資し、そいつを爆回収してもらおうと企んでいた。
朝っぱらから弟に起こされ、このクソ寒い冬空の下バイクを2ケツしてパチスロに向かう20代中盤の男共。なかなか良い画が浮かんでくるではないか。これよ、これ。この風情を味わいたかったんだよ。
パチスロ店に着くと、年末だというのに錬金術師たちが既に集まっていた。聞くところによると、今回行ったところは九州でもかなり有名な店らしく、通常でも人は多いとのことだ。なんだか周りの人たちのことが仲間と書いてブラザーと思えてきた。本当のブラザーとも一緒に来ている私だったが、お前らとは魂で繋がってるんだよな・・・
優先入場の抽選券というのも初めての体験だった。
パチスロでは良い台を得るために店の中に誰よりも早く入ることが重要だ。ただ、適当に入店させていると、飢えたサーベルタイガー並に危険だと言われるギャンブラー達を制御することが出来ない。そのため、開店前に整理券を抽選で配り、その整理券通りの順番で入店していくシステムとなっている。
この整理券を貰うためには開店前に店に着いていなければならず、それが朝方に列を成している錬金術師たちの事情だということがわかった。このように新しい世界を知ることが出来てとても楽しい。また、この整理券を配る工程もなかなか良かった。というのは、整理券は抽選で何番かを決めていくものなので、まぁ先に並んだところで1番が取れる訳では無い。
ただ、1番を取られたあとは1番を引く確率がなくなるというのも事実で、やはり勝負師たちはこぞって前に行きたがっていた。そこでパチスロ店が生み出した方法が、地面に網目状に張り巡らせた白線の上に我々を立たせるというもので、これが我々を管理するためだけに引かれたというのが最高。
「この駐車場の謎の白線はそのためにあったんだあ・・・!」と感動さえ覚えた。大袈裟に言うと我々を人扱いしていないというか、かなり存外な扱いを受ける感じが面白かった。
約100人が並んでいた中、私が30番台を引き当て弟が70番台だったため、私のを差し出した。無論、私は弟に賭けている。確かに、私も少しだけスロットで遊びたいと思っていたが、私のは所詮お遊び。弟は生き抜く術である。この時点で眼の色が違う。
「弟が良い台を取れますように・・・!」と願い、私の順番が来るのを待った。私が入店した時、すぐそこにはニコニコ顔の弟がいた。どうやら良い台を取れたようだ。幸先がいい。
「良い台取れた?」
「おー、取れた取れた。ラッキーだったよ」
良かった。とりあえずは第1ミッションクリアーだ。弟いわく、スロットは設定があるらしく、その設定を見たりして台を決めるんだそうだ。なので、そのおメガネにかなわないと勝つこともままならないのだ。幸いなことに弟はその条件に見合う台を見つけられた。
「じゃあ、俺の台も見繕ってくれ」
「OK〜」
そうして弟が見つけてくれた台が笑うせえるすまんの機種だ。一応、笑うせえるすまんなら多少は知っているし、演出も楽しめるかもしれない。ウキウキ顔で席に座ったところで、「ん・・・??」となった。
これ、どこからメダル出るの??
え?というか、何を狙ったらいいんだろう?目押しとか聞いたことあるけど、出来るの?え?え?どうしよう、わかんない!
これらの疑問は弟が全て解決してくれ、かなり勉強になった。みなさん、スロットって“7”を狙うんじゃないんですよ?チェリーとかを狙うって知ってました??
さて、それではお待たせいたしまんた・・・
俺のパチスロ、STARTじゃい!!!!!!
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ぜんっぜん当たんねーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
くそぅ、くそぅ!!!!これで漫画の主人公とかだったらラッキーパンチで最初にめちゃくちゃ当たったりすんのに。。それで調子に乗って使い果たしちゃう所を、俺だったら冷静だからその勝ち分だけ丸々持って帰れるのに・・・
まぁ、パチスロだからしょうがないよね。当たらない時は当たらないか・・・
トボトボと弟のところに戻ると、弟がめちゃくちゃ当たってるみたい。
数十万の当たりじゃないけど、これを引けたら借りた分の3万円は返せるくらいらしい。おいおい、きっちり結果出すんかい!これはすごいぞ!私の下がったテンションがもう1回上がった!
弟にもう一度台を教えてもらい再チャレンジ。
私の二つ名を知っているか・・・?
パチスロ不死鳥(フェニックス)とは、俺のことじゃい!!!!!!!
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うん、気が付いたら3万円負けてるんだわ。
つーか、マジか。消し飛ぶのはえ〜なぁ!!クソが!!沼とは本当に絶妙な例えだよ!!ああ!!沼さ!!もう取れないんだもんね〜〜!!もう嫌だ!!やらん!!やらんぞ!!目押しもろくに出来ない初心者が手を出しちゃダメだったんや!!!おとなしゅう、弟にだけ賭けることにしますわい!!!!!!!
気が付くと、私はまた弟に教えて貰った台でパチスロを打っていた。
「もう・・・もう後には引けないんや!!まだパチスロの楽しさとか味わってないし、何よりお金を取り戻さないと年を越せないんや!!」
すごいね、こんな感情になってんだもん、いつの間にか。そりゃ、どっぷりハマる人も出てくるよね。
私が打っていたのは戦国時代をモチーフにしたパチスロで、信長や秀吉や家康が出てくるもの。これは歴史が題材なので、初見の私でもわかりやすくて良かった。ちょこちょこ当たったり外れたりする中、なんと!!
キターーーー!!!!
よくわからんけど、きただろこれ!!なんか凄そうなの当たったっぽいぜよ!!
興奮しながら弟に言うと、
「流れが来たね、そのまま打ち続けて」
Oh My ブラザー is So クーール…
オマエ、本当に手練なんだな。
超冷静じゃん。よし、わかった。俺も冷静に打ち続けることにするよ。
(30分後)
ドゥエヒハヒヒヒヒヒヒヒ!!!!!
まだまだリーチが止まらんぜ!!!!!!
ウヒヒヒヒヒハヒハヒフフフ!!!!!!
(30分後)
おい、てめぇコラ!!!!
さっさとデートさせろ、この売〇が!!!!!
今までどんだけお前に注ぎ込んできたんだと思ってるんじゃい!!!1回くらい良い思いさせてくれや!!!!!
(この時に狙っていたリーチは、豊臣秀吉がキャバ嬢にアフターをねだるリーチで、アフターが成功すればさらにメダルがジャンジャカ出てくるというもの)
(30分後)
ふぅ・・・(射精)
長く続いたリーチが終わった。
「あれ?私、射精した?」と言わんばかりの気持ちの良い怠さがそこにはあった。勝つとはこういうことか・・・
メダルをカードに変え、弟と合流した私は、カウンターでゴニョニョしたあと、お金を受け取った。
さぁ!!!気になる勝敗は!?!?!?
プラス11000円!!!!!!!
ぐっ!?!?!?
かなり微妙だ!!!
しかし、まず勝てたというのは賞賛に値するだろう。弟は何も考えずにスロットを打った訳ではなく、彼なりの理論を武器に勝てる台を引き当てたのだから。
朝っぱらからパチスロに行き、終わったのが午後16時過ぎ。約8時間の戦いは今終わったのだった・・・
疲れ果てた戦士達は近くの飯屋でカレーを食い、また2ケツでバイクに跨って帰路をあとにしたのだった・・・
~ END~
追伸:耳鳴りがやまず、体中がタバコ臭くて、「あんたパチスロ行ってきたでしょ??」というのは1発でバレると思った。もう、本当に耳キンキンするわ。あと、目ね。スロットが目の前にあって、リーチとか「チカチカチカチカ!!」って光るもんだから、目への負担がえげつねーえげつねー。花粉症も相まってしばらくは目のシパシパが取れんかったわ。
さらに追記:件の弟ですが、この春から私の家に転がり込んで、パチスロの専門学校に通うらしいです。また、二人で勝ちに行きます。