なぜオバチャンは髪を紫色に染めるのか
人間は歳をとるにつれ白髪が増える。
一説によると、髪に黒い色素を与えているメラニンを生成する細胞が弱まるせいだという。
そのため、白髪があることは老化の現象と捉えられ、若くして白髪が多かったりなんかすると「若いのに苦労してるんだね…」と慰められたりするものだ。
白髪があることが老化現象ならば、できるだけ隠しておきたいのが人間の性である。床屋さんや美容院では、白髪染めをメニューとして提供しており、一定の需要を獲得している。
さて、白髪を染めるということだが、何色に染めるべきだろうか。
元来、日本人は美しい黒髪を持つ人種であり、太古から黒髪と共に歩んできた。平安時代の人物画には、パツキンのチャンネーや、緑黄色青などが入り混ざった志茂田景樹のような存在は見られない。
つまり、スタンダードな考え方でいくと、子どもの頃から馴染みのある黒色に染める人が圧倒的に多い。元々黒かったものを元に戻しただけであって、なんら違和感はない。
しかし、あなたも見かけたことがあるのではないだろうか。
そう。白髪染めにおいて、黒色ではなく紫色派が存在しているのだ。
そして紫色派は、50~1000歳までのオバチャンが大多数だ。(個人的見解です)
どうして黒ではなく紫色に彼女たちは髪を染めるのだろうか。
恐らくだが、それには冠位十二階が関係していると思う。
冠位十二階とは、飛鳥時代に聖徳太子が唱えたとされる位階制度である。人を能力に見合った位に分け、身分の上下にかかわらず優秀な人材を登用するという狙いがあったとされている。
冠位十二階は、色と色の濃淡によって12個の位に分けられる。
「徳・仁・礼・信・義・智」という六つの要素に、色の濃淡を含めた割り振りを行った。
偉い方から順に、
「紫・青・赤・黄・白・黒」とされており、紫色が一番有能な者に与えられる。
オバチャンはこれを狙ってるに違いない。
冠位十二階でいくと、紫は1番有能な証。
オバチャンになってもトップを目指すその心構え、嫌いじゃない。
だとすると、紫色は納得だ。合点がいく。
オバチャンのバイタリティの理由がわかった気がする。
また、オバチャンはお喋りが大好きである。
そして、ご存知、聖徳太子は何人もの人が同時に喋ったことを聞き分けられたらしい。
仮定の話だが、オバチャンは髪を紫にすることによって、人々の話を同時に聞き分けられるようになる生態なのではないか。
つまり、髪を紫にするのはオバチャン達にとっては、老化ではない。
進化だ。
周りが歳を取るにつれ体が弱くなっていく増え一方で、オバチャンは人知れず進化していた。
私はこの事実が少子高齢化を迎える日本において突破口になるのではないかと思っている。
全員が全員、髪を紫にする訳では無いが、よる年波に逆行するようなオバチャンの興味深い生態は解明すべきだろう。それは、禁断の果実かもしれないし、パンドラの箱かもしれない。
しかし、髪を紫に染めるオバチャンは明らかに新人類である。誓って言うが、入社した初日に辞めるようなゆとり世代(=新人類)のことではない。
彼女達こそ日本、いや、世界を救う鍵となる存在であり、今後とも丁重に扱わなければならない。
「オバチャン」だなんて、親しみを込めて気軽に呼べる日も、もう残りわずかかもしれない。
だからこそ、私たちは今オバチャンたちと共に過ごせているこの最後の平成の冬を謳歌しなければいけないのではないだろうか。
(紫色は白髪を目立ちにくくさせることが出来る色だそうです。)