お前の息子は預かった
ぼくの名前はたけるです。
小学3年生です。
今日、友だちと公園であそんでたら、知らないおじさんに会いました。
そのおじさんは「ついてきてくれたら、ニンテンドースイッチあげるよ?」と言ってたから、ぼくはおじさんについて行きました。
おじさんの家につくと、なんでか分からないけど、口にガムテープされて、ぼくはしゃべれなくなってしまいました。
おじさんがこわい顔になってて、ぼくはこわくてなきそうでした。でも、なきませんでした。
おじさんは、ぼくの家に電話をかけました。
それで、ぼくに電話をかわってくれて、お母さんの声を聞いたら、ぼくは安心しちゃってないてしまいました。
でも、ガムテープはまだとってくれませんでした。
おじさんは新聞紙を切って、何かをつくってるみたいでした。
つまり、お前の息子は完全に俺が預かっている。
俺が預かっているという事実は覆しようがないし、実際に俺は預かっているから、それはお前の預かるところではない。
しかし、お前の息子の預かれっぷりは見てて笑えてくる。
こちらがニンテンドースイッチを預けるというと、自分から預かられに来た。
どれだけ預かられやすいんだ。預かられ慣れしすぎていて、こちらが逆に預かられているのかと思ってしまった。
恐らく、普段の生活でも預かられ中心の生活を送っているんだろうな。いいご身分だよ、ほんとに。
おっと、警察には息子を預かられたなんて言うなよ?
警察は知らない人が自分の身内を預かっている状況にめちゃくちゃ厳しいからな。絶対に預かられたなんて言うんじゃないぜ?
さて、俺の要求はたった一つだけだ。
おっと、いいか?
俺がお前の息子を預かっている状況を忘れるなよ?交渉権なんてお前にはない。お前は交渉権を預かっていない。全ては俺の預かるところのみだ。
俺の要求を理解したなら、今日の16時、歩道橋の下まで一人で8000万円を預かって来い。
あと、逃走用のレンタカーもレンタカー屋から預かって来てもらおうか。
8000万円とレンタカーの鍵を俺が預かったのち、お前の息子は返す。預かっていたからな。
返すのは当然だ。
お前一人で預かって来い。警察に知らせたらお前の息子の安全は預かれない。
以上だ。
〜3年後〜
キャスター「速報です。三年前、現金8000万円を要求した子供人質誘拐事件がありましたが、その犯人が今出頭してきた模様です。なぜ、今更になって自首してきたのか?犯人は、『8000万円は預かっていたただけだから、返しに来た。当然だ。』と述べており、現金8000万円も元の持ち主に返ってきたようです。以上、ニュース速報でした。」