土手

みんな集合だよ~

M-1グランプリ2018の感想

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https://natalie.mu/owarai/news/310491

 

本当に最高でした。

 

 

 

まず、感謝を言いたい。

本当に面白かった。腹から声出して笑った、笑わせてもらった。

お笑いは最高。お笑いに携わる全ての人にお礼が言いたい。年に一回のこの祭典を開いてくれてありがとうございます。ファミチキを沢山買いますし、Cygamesのゲームをダウンロードします。お酒はストロングゼロ一択です。

 

 

2018年のM-1グランプリが終わりました。平成最後に相応しい素晴らしい大会でした。

自分みたいな者が恐縮ですが、今年も感想を書かせてください。「お笑いを生業としていない奴が何言ってんだ!」と思うかもしれませんが、素人が好き勝手言い合うことが出来るのもそのジャンルを広げるファクターになるはず、と信じて毎年書いています。お笑い芸人の方に偉そうにするつもりなんてないですし、特定の人を貶めようとする意思もありません。感想の中で出てくるのはあくまで好みの問題であって、その芸人の面白さが揺らぐ訳では無いということを念頭に置いていただけると助かります。

 (基本的に敬称略です)

 

 

予選ステージ

 

①見取り図

 

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https://profile.yoshimoto.co.jp/talent/detail?id=2876

 

トップバッターは見取り図。

ネタの前に、M-1グランプリ恒例の「出場者が上裸でファイティングポーズをする写真」の中で、盛山さんだけ異常に毛むくじゃら過ぎて笑ってしまった。真っ黒じゃねーか!

 

ネタ『彼女が欲しい』

個人的に掴みは一番好きでした。「豚はいいけど、勝手に包むなよ!」いや、豚はいいのかよ!というか、包まれることの何がそんなに嫌なんだよ!こういう面白さが全面に出てきた漫才もっとみたいなー。

「ジャンボ勾玉」「ししゃもやん!」「あたおか」とか、耳に残るワードも多くて、要所要所で笑いをとっていたように思えます。番組が終わって振り返ってみると、トップバッターが見取り図だったのはベストなチョイスだったかと。本人たちは緊張していると言っていたけど、見ているこちらとしてはそういう風には見えなかった。というか、どうしてもM-1グランプリの1組目ってエンジンがかかる前段階になってしまうというか、会場の空気も見ているこちらとしても身構えてしまう。正直、これでいきなり1番目にトム・ブラウンがきてたり、ジャルジャルが来ちゃったりしてたら、二組ともあんなに良い評価は出ていなかったんじゃないかな、と思う。その点、見取り図の漫才って急にギアを上げすぎることも下げすぎることも無く、ブレーキも丁寧に踏んでくれて、でも、時たまスピード違反でブッちぎるみたいな感じで、見てて楽しくなる漫才なんですよね。まさに「M-1グランプリ!スタート!」って感じで、「1組目からこんなに面白いんかい!」とこちらをワクワクさせてくれた。

 

漫才のスタイルとしては、けっこうツッコミありきの漫才だと思っていて、リリーさんのボケは気付きを与えるためのフリで、そこを盛山さんが綺麗に落とすって形が、トップバッターとして相応しいと思いました。上沼恵美子は「前半の笑いの取り方が古い」と言っていましたけど、個人的には「古くても笑いが取れてりゃ何も問題なくない?」と思っているので、なんら問題がなかった。あと、前半で振っておいた謎の人物(行動、言葉)を後半で回収する手口なんかは、近年よく見る手で、私は「このほっといてる感じは後で回収するんだろうなー」とか考えちゃうタチなもので、その考えが頭をヨギると冷めてしまうんだけど(去年のスーパーマラドーナとかそうだった)、マルコ牧師はあまり見たことないパターンでした。このパターンで、あんなに全乗っかりで知ったかぶりしてて、のちのち聞き返すパターンは初めて見たので、「なんなんだよ笑」となって笑った。ただ、オール巨人師匠も言っていたけど、そんなにたくさんは仕込まなくても良かったかも。どちらかと言うと、冒頭の「包まれることをなぜか嫌がる」とかがツボで、そっちメインの漫才を見てみたいかも。前半振って後半回収するみたいな、漫才スタイルを逆手に取ったボケって、ある程度記号化してしまう面があって、ドリフのように絶対王道の域まで行くとそれはそれで笑ってしまうんだけど、4分間っていう枠の中で繰り返すのはちと忍びないかもしれない。

 

ただ、前半でも述べたようにトップバッターとして最高の盛り上げをしてくれたと思っているので、今回の大会の成功は見取り図が土壌を作ってくれたと言っても過言ではないと思います。面白かったです!

(改めて見直してみたんですけど、やっぱり見取り図めちゃくちゃ面白い!もっと評価爆上げになって欲しい。。)

 

 

 

 

②スーパーマラドーナ

 

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https://profile.yoshimoto.co.jp/talent/detail?id=387

 

スーパーマラドーナは毎年決勝の常連で、武智の並々ならぬM-1グランプリへの熱い想いを聞いているだけに、ラストイヤーの今年は気迫がみなぎっているように見えた。逆に田中は飄々とし続けていて、良いコンビバランスだなと思った。

 

ネタ『実は怖い人』

例年、M-1グランプリで見るスーパーマラドーナのネタは、武智が高圧的で田中がそれを飄々と交わすパターンを軸に作られてると思っていたが、今年は少し毛色が違いました。田中の狂気が前面に出ていて、その狂気に武智が押され気味だった。「一見、人の良さそうな人なのに実は怖い人だった」という役を演じる上で、田中はめちゃくちゃハマり役だったし、普段は威圧的な武智がビビってる姿を見て、「怖すぎるだろ」と強く感じさせられた。少し横道に逸れますが、「ホラーと笑いは表裏一体」という説があります。全然文献とか読んでないから詳しくは分からないですが、自分なりにその事を考えると、ホラーは極度に緊張に振った表現だと思ってます。緊張に振れば振るほど、そのぶん後に返ってくる緩和の破壊力が増すということでしょうか。その考えを踏まえると、スーパーマラドーナのネタは緊張と緩和の連続だった。ドアをめちゃくちゃ強く閉めたり、急に意味の分からない一発ギャグを始めたり、田中の一つ一つの行動がこちらの感情を揺さぶってくる。対して武智は必死にマウントを取ろうと、不穏なことを言うのだが、真の狂気の前には立ち向かう術がなく、速攻で田中の手のひらの上で転がされる構図がとても面白い。

 

ただ、松本人志も言っていたが、ネタは暗かったかもしれない。サイコ感が強すぎて、ファンタジーとして受け入れられなかったのかも。裏を返せば二人の熱演が凄かったからだと思うが(適当にサイコパスを演じることほど冷めることは無い)、最終的なジャッジで笑いより狂気が上に来てしまった感は否めない。しかし、ラストイヤーに今まで決勝ステージに行けていた鉄板の構図を捨てて戦いに挑んで、結果を出している。松本人志が「どうしてこのネタをやっちゃったの?」と聞いた時、即答で「1番良いネタを持ってきました」と言った武智に痺れた。ジャルジャル、トム・ブラウンなどにも感じたが、「とにかく自分たちがおもしろいと思ったことをやる」。そこに芸人の矜恃を感じた。ただM-1グランプリを勝ちに行くのではなく、「自分たちの面白いと思った事で優勝したい」という信念には本当に頭が下がる。とても崇高な精神だと思う。予選ラウンドで敗退が決まった時、武智が紡ぎ出す言葉を聞いていて、こっちまで泣きそうになってしまった。M-1グランプリって、本当に最高の大会ですよね。ひとまずはお疲れ様でした。めちゃくちゃ面白かったです。

 

あと、田中さん、コメント-1グランプリではぶっちぎりの優勝でした。テッテレー。

(追記:武智さん。。あの動画はさすがに、ちょっと。。とりあえずその話題には今は触れないようにしときます。なぜあんなものを世に出そうと思ったのか。。)

 

 

③かまいたち

 

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https://profile.yoshimoto.co.jp/talent/detail?id=636

 

キングオブコント優勝も果たしているかまいたちが、去年に引き続きM-1グランプリ決勝の舞台へ。というか、歌ネタ王でも決勝行ってるんですけど、本当スゲーな!決勝請負人か?

 

ネタ『タイムマシンがあったら』

「タイムマシンがあったら、過去に戻ってポイントカードを作る」。このひとつの発想であんなに面白い4分間を作り出せるの天才としか言い様がない。ネタの序盤はもったりとしたスタートを切ったかと思いきや、どんどんギアが上がっていき、最終的には会場が揺れるほどの爆笑をかっさらって行った。

大抵、「もしも」の話なんて相場はつまらないのに、話す人によってはこんなに面白い題材になるんだとビックリした。1番最初にドカン!ときたのは、「(タイムマシンをそんなことに使うなんて)勿体なさすぎるやろ!」「ポイントがやろ?」のところか。あれは速さも良かった。ところで、人が論破されるシーンって、明らかな強者と弱者が生まれてしまうので、見てていたたまれない気持ちになることがあるんだけど、かまいたちがやってるのはそういう気持ちにさせないな、と思った。「濱家の反論がズレてて、そこを正す」、いわば正論を言って大きな笑いに出来るって、もう最強じゃないですか。「過去に戻ってもポイントカードが作れるとは限らない」→「いや作れるだろ」、なんでこんなに正論が面白いんだろう。サンドイッチマン富澤も言っているように、最後の言い合いになるシーンはまさに「人間」で、人間という存在が1番面白いと再認識させて貰えた。去年よりも山内のキャラクターが人々に認知されてきて、このネタを出したことにより、ネタが相乗効果で更なる高みに登った感じでした。

 

惜しくも決勝には進めなかったものの、「このクオリティで決勝ステージ行けないのかよ、マジで今年レベル高いな」であり、かまいたちのお笑いセンスの高さは言うまでもない。コントも漫才も最高水準で、平場のロケも面白くて、ドキュメンタルで見せつけたノージャンルお笑いもいける口とか、とんでもない人達だ。

 

 

 

 

④ジャルジャル

 

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https://profile.yoshimoto.co.jp/talent/detail?id=179

 

私、ジャルジャル大好きなんですよね。いつだったか、Twitterで見た感想なんですけど、「ジャルジャルだけちがう世界のお笑いを見て育った」っていうのがあって、「その通りだな」と。どんな頭をしていたらその発想に行き着いて、そこからどうやって私たちが理解出来るように訳してくれているんだ、としきりに思います。ジャルジャルもいつの間にかラストイヤーになっていたんですね。発想が異次元過ぎて年齢が不詳でした。そうかー。

 

 

ネタ『国名分けっこ』

まさにジャルジャルといったネタ。スーパーマラドーナのところでも言及しましたが、自分たちが面白いと思ったことをやりに来てる。尊敬します。

ナイツの塙も審査評で言っていましたが、ゲームの説明をあまりせずに、お客さんと一緒に理解していくのが秀逸でした。確かに、「国名分けっこ」というゲーム名が出されて、「イタ」と問われると「リア」が出てくるのは自然な流れ。初めて聞いたゲームなのに何故かやり方がわかるという謎のアハ体験みたいな感じでした。

「ドネシア」「ゼンチン」「トラリア」と言った、普段目にしているはずなのに気が付けないパワーワードを見つけているのが着眼点鋭すぎる。普通、そこから国名を分けっこするゲームに行き着くか?異次元のお笑いたる所以だと思いました。「ゼンチンの口になってんねん!」とか、上級編の(上級編ってなんだよ)「アルゼン」「チン」「アルゼン」「チン」なんかもバッチリ決まっていたし、終始笑いが止まりませんでした。

 

ツイッターを眺めていると、「練習量が透けて見える」という意見が多くあるみたいです。確かに、あれだけのテンポでやっているとそう思わざるを得ないです。ただ、「これが単純に「国名分けっこ」が上手なだけ」だとしたら、めちゃくちゃ笑えてきませんか?「初めてなのになんなんだその対応力は!」という見方もありだと思っていて、実際、M-1終了後の打ち上げ配信では、やり取りの回数は決め打ちではないそうです。「お客さんの反応を見て突っ込むポイントを決めている」と言っていました。この超絶技巧が「国名分けっこ」で使われていると考え始めたら二度笑えてきます。こんなにしょうもなくて最高の技術ってないですよ。ただ練習しただけではこんなに面白くなってない。それに、「ジャルジャルの二人がやるからこそ面白い」というのもある。後藤の発する「ドネシア」「ゼンチン」の声色、福徳の細やかな動き、二人の表情、リズムが重なり合って、あんなにおかしな空間が生まれている。加えて、後藤の突っ込むタイミングも絶妙でした。「頭おかしなるで!こんなの!」と言われた時、「確かに!」って思って、めちゃくちゃ爆笑した。「発狂するで、こんなの!」。福徳もこんなゲームでやたらと上級者ぶるところがわけわかんなくて面白かった。そんな大したもんじゃないだろ!そして、二人のやり取りを見続けていると、これも意味は分からないけどなぜか「ドネシア」「ゼンチン」を待ち望んでいる自分がいて、自分で自分に「いや、何が面白いんだよ!」と突っ込むような、これはどういう感覚のお笑いなんだ?と、全てが異次元でした。立川志らくが99点を付け、松本人志が面白かった、と評していましたが、明らかにこれまでのお笑いとは異なったものを見せてくれました。

 

上沼恵美子にはハマらなかったようですが、これをセンスのある、なしで二分化するのは本当に良くない。私自身、上記した限りでは「訳わかんないけど面白い」「意味わからないけどめっちゃ笑った」と書いてしまっているので、自分の頭の整理が出来ていないことに苛立ちを隠せませんが、ジャルジャルのお笑いを理解できる層、理解できない層とかないと思う。確かに、評価は真っ二つだと思います。嫌いな人の理由は推測ですけど、「意味わからない」「同じこと言ってるだけ」「くだらない」とかですかね、多分。正直、私も意味はわかってないですよ。「なんでこんなに連呼されると笑ってしまうんだろう」とか、「くだらなすぎてウケる」ってことに、科学的な根拠を見つけるのは難しいです。オール巨人師匠だってなんでか分かんないけど笑っちゃうって言ってましたし。でも、ジャルジャルはそういう概念をぶっ壊してると思っていて、「意味わかんないけど面白い!」のパイオニアなんじゃないかと考えています。だから、既存のお笑いの枠の中で見ようとしないで、ただ流されるままに「わけわかんねーことやってるなー」って、何となくで見ればいいんじゃないかなと思います。「くだらない」の一言で片付けるのはもったいないですよ、本当に。結果、見事決勝に進みました。カッコイイ…

 

 

⑤ギャロップ

 

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https://profile.yoshimoto.co.jp/talent/detail?id=353

ギャロップもラストイヤーで、初めての決勝進出。毛利さんのDJ活動についてはよく目にしていたんですが、いつの間にやらM-1決勝へ。これは私が劇場に行っていないで知らないだけなので、ゴメンなさい。でも、ラストイヤーに仕上げてここまで上がってこれるの圧巻ですよね。

 

 

ネタ『合コンの人数合わせ』

「盤石の面白さ」を持っているなと思いました。20歳しかいない合コンにハゲのオジサンを呼んで人数合わせをしたがる毛利に対して、真っ直ぐの正論をぶつける林。その正論の中に、今回物議を醸した「自虐」が入っていて、合コンにハゲたおじさんが乱入してくる映像的な面白さが想像しやすくて面白い。なぜか頑なに人数を合わせたがるし、普通に20歳の合コンに混ざろうとしてる毛利がヤバいおじさんで面白い。「何か問題でも?」みたいな顔するなよ!そこをちょうどいいタイミングで突っ込んでくれるから安心して見れる。「安心して見れた」んですよね。ナイツ塙がギャロップのことを「M-1の4分間の筋肉を使いきれなかった感じ」と評していました。確かに、「ずっと見れる漫才だな〜」って思ってみてました。実際、この感じの掛け合いがプラス4分間あっても、笑って見続けられる。そういう意味では、漫才においてすごくしなやかな筋肉を持っていると思っていて、それこそ馬が長距離を走るような、ゴールには確実に連れて行ってくれて、その道中の景色も楽しみながらっていうイメージ。だからこそ、ジェット機を求められるような雰囲気の中では、「暗い」と思われたりしてしまったのでしょうか。人数合わせで呼ばれたハゲたおじさんとおばさんが向かい合ってる絵面めちゃくちゃ面白いけどなぁ。。

 

さて、これに言及しない訳にはいきませんが、審査員の上沼恵美子がギャロップに対して「自虐ネタはウケない」と述べた点。まぁ、審査員の好みの問題もあるでしょうが、とりあえず言いたいのは「え?暗かったか?」と。別に暗くなかったですよね?それに自虐というのもなんかズレてるような。林は自分がハゲているから合コンに行かないのではなく、まず、20歳中心の合コンに40代の自分が行くのは常識的に考えておかしいから行かないって言っています。それに付随して客観的に自分を見た上で、「こんなハゲたおじさんが行ってどうすんねん」と畳み掛けているわけですが、1番最初に「ハゲているから」(自虐)が出ている構図には見えなかった。もちろん、容姿的な意味でハゲたおじさんってキャラ的に面白く感じてしまうので、そこにスポットライトが当たるのは良いんですけど、そのことを「自虐」と捉えるのは「ん?」と疑問を感じずにはいられません。そもそも林は「ハゲであること」を悲観していましたっけ。何回か見直してみても、林の表情からは「ハゲであること」の悲壮感は見えなくて、毛利に対する「なんなんだコイツ」感が上回ってるように思えました。

 

だから、このネタの見方も「自虐ネタ」なんていう枠に当てはめたものじゃなくて、「シチュエーションの面白さ」に振ったものかなーと思っていました。若い合コンにハゲたおじさんが乱入することによって起こりうるバカバカしさにフォーカスが当たっているのであって、あれを自虐ネタと言ってしまう(決め込んでしまう)と、もうそういう目線でしか見れなくなったりすることもあります。だからこそ、ネタが終わったあとに上沼恵美子が言った「自虐ネタはウケない」というのも、自由な見方をできなくする要因の一つになりかねないので、「そういうことは言わないでくれよ…」と思わざるを得ませんでした。言行不一致がだいぶ目立ってしまいましたね。あの上沼恵美子さんのコメント、態度だと、どうしても好み・感情で点数をノリで付けているように見えてしまいます。M-1グランプリという賞レース形式である以上、自分の中に評価の軸は置くべきだと思っていて、オール巨人師匠は己の中にある漫才という形式をしっかり意識しているように見えました。中川家礼二も会場のウケ具合という指針を踏まえた審査をしているように見えましたし、ナイツ塙は漫才の可能性に加えてM-1グランプリという賞レースの側面を意識した評価をしていました。立川志らくは、うーん、これは賛否両論あるかと思いますけど、「漫才の新しい可能性」と言った感じでしょうか。審査も「漫才が上手い!」という点だけでは点数に結び付けておらず、ジャルジャル、トム・ブラウンに高得点を付けるあたり「上手いだけではない別の要素」を重要視していたように見えました。「新しけりゃなんでもいいのか」ってのと、面白いポイントをもう少し言語化して説明して欲しかったってのはありますけど、まぁ志らくさんも軸はあったんでしょう。

memushiri.hatenablog.com

(このブログを読んでなるほど!!と思わされました。背景とか文脈を知らずにベラベラ言うのは良くないな。スイマセン。でも、とりあえずファーストインプレッションとして、残しておくことにします。)

 

しかし、上沼恵美子にはそれをあまり感じなかった。ジャルジャルにはネタは嫌いです、トム・ブラウンには未来のお笑いで私みたいなオバチャンは分からないと述べ、かまいたち、ミキ、霜降り明星、和牛に対しては高評価、ということを鑑みると、「ん?よく分からん…」となってしまいました。なんだろう、何が恵美子の琴線を動かすのだろうか。速さ?手数?しゃべくり漫才?自虐は嫌い、だけど、ミキの自虐は98点。人徳がある。うーーーん・・・???まぁ、あまり審査員のことを書いていてもしょうがないのでこのくらいで終わりにしておきますが、コメントをキツくして会場を冷やすのはやめてあげてくれぇ…(なんか、またあとで審査員について書きそうだな…)

 

 

横道にズレてしまいましたが、ギャロップは確実に面白かったです。「面白いハゲ方をしていない」ことが、今後逆張りになって面白くなる予感しかしません。M-1グランプリの打ち上げでは、1番ウケていました。DJ活動もそこそこに、漫才の方も期待しております。見に行きます。

 

 

 

⑥ゆにばーす

 

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https://profile.yoshimoto.co.jp/talent/detail?id=3532

ゆにばーすは2年連続で決勝進出しており、もうその時点でお笑い偏差値バチバチなのは異論がないはずです。なのに、Twitterで変に絡まれて、キツイ対応取ったりするから、なんとなーく嫌われてるイメージがある。まぁ、本田圭佑しかりビッグマウスの人って、批判を受けがちですし、川瀬名人もそのあたりは兼ね合いついてんのかなって思いますけどね。よしログで舐めてかかってきた後輩に対して、「漫才で返り討ちにしてやった」と言っていて、そういうのをスマートに出来たりするとカッコイイんですが。。でも、めちゃくちゃ「人間してるな」って感じなので、もうこのまま突っ走っちゃってもいいかも。はらちゃんは、マジで謎。女性の芸人の中でも、よく分からない位置にいる。不思議なお方だ…

そんなゆにばーすは、今年の頭に上方漫才大賞取ってて、今回優勝した霜降り明星を抑えて新人賞取ってるんですよね。実力もきちんと評価してもらえてる。

 

 

ネタ『ロケのシュミレーション』

今年も昨年と同様の入りで、川瀬名人が丁寧に感謝を述べるところから、はらがカットインしてきて、川瀬名人がブチギレる形式。去年はよしもとクリエイティブ・エージェンシーについてキレていましたが、今年は一般素人に矛先が。これは題材であって(ホントの体験談かもしれないけど)、目の前のお客さんに対して怒っている訳では無いのだけれど、丁寧な人かと思ったらいきなりブチギレ始めたので、ビックリさせてしまったのかもしれない。この掴みを完全に掴み損ねてしまった感はあった。後半の「激ヤバブスカップルじゃないですよー!!」と「プロポーズしてるわけじゃないんですよー!」ってのが大きな笑いどころかと思われるんだけど、その部分もオール巨人が言うように「考えすぎてる感」が否めなくて、笑う感じではなく「あー!なるほど!」ってなっちゃったんですよね。生後2ヶ月の子が「UHA味覚糖」っていうのも、「上手い!」が先に出ちゃうので、笑いには上手く繋がらなかった印象。でも、「ジェットコースターの重心合わせろよ!」はすげー良かったです。笑いました。途中、漫才の中で漫才を披露する流れがありましたが、確かに、無理やり男女コンビの構図を利用したネタじゃなくても、はらちゃんがただ単純にやべーことやってる漫才でも全然上手く行きそうだなと思いました。結果最下位となってしまいましたが、今後にめちゃくちゃ期待できるコンビだと思うので、川瀬名人が引退しなくて良かったとも思っている自分もいて、ジレンマがありますね。とりあえず、またしばらくはゆにばーすの漫才を楽しめそうで何よりです。

 

 

 

⑦ミキ (敗者復活枠)

 

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https://profile.yoshimoto.co.jp/talent/detail?id=5104

敗者復活戦から勝ち上がってきたのはミキでした。ミキについて言う前に、ちょっとだけ敗者復活戦について触れておきます。

今年の敗者復活もすごい戦いでした。一組一組に言っていると、文字数が2万超えるかもしんないので、気になった組にだけ。

 

金属バット 

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https://natalie.mu/owarai/news/235953

元々ファンというのもあるけど、個人的にすごく応援していた。ゆる〜っとしたテンポの漫才で、その持ってくる題材がイカれてる。普通のテンションで終始変なことばっかり言ってるから、笑ってしまう。ただ、今回のネタの盛り上がり的には「決勝戦には進めなかったんだろうなぁ」と結果には納得してます。ただ、敗者復活戦のコメント-1グランプリでは、馬鹿でかい爪痕を残してましたね。ギャルのねーちゃんなんか言ってくれやとか、印象が強烈。

 

 

プラス・マイナス

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https://profile.yoshimoto.co.jp/talent/detail?id=606

敗者復活枠の本命でした。めちゃくちゃウケてたし、とんでもなく面白かった。蓋を開けてみると、1位のミキとは約2万票差の2位。まぁ、あんまりこういうことは言いたかないですけど、ミキの組織票的なもんは止めようがないんで、どうしようもないんですけど、それでもかなり多くの人がプラス・マイナスを評価していたってのは結果として証明されました。「YOYOYOYOYOYOYOYO」のところ腹抱えて笑ってしまった。モノマネも達者だったなぁ。今後の活躍にも期待大。

 

 

さて、一位通過で上がってきたミキですが、まず言いたいのは「めちゃくちゃ面白いぜ」ってこと。一部の過激なファンのお陰で、「お笑い以外の面で評価されてる!」なんてことを思ったりする人もいらっしゃるみたいですが、漫才超面白いじゃん。うーん、まぁ、気持ちはお察ししますよ。敗者復活枠っていう自分も参加出来る投票システムで、「応援していた人以外が勝ち上がっていく、しかもそれがお笑い部分を評価していないファン層に支えられた組織票なんじゃないか?」なんて疑惑が生まれたら、勝ち上がったミキを悪く見てしまうのも人間の性かもしれない。

でも、直後にツイッターを見てたら、タイムラインがミキに対する「ないわー」的な反論ばっかりでちょっとうんざりしました。敗者復活でやっていたサザエさんのじゃんけんネタは題材が分かりやすくバカバカしくて良かったと思いますし、ハプニングをアドリブで笑いに繋げたミキの実力が折り紙付きってのは証明されてるはずなんですけどね。。

 

 

ネタ『ジャニーズ事務所に勝手に書類を送った』

いやー面白かったですね。中だるみしそうなところもあったけど、スピード感と勢いでそのまま突っ走った印象です。やっていることはそんなに新しいことはしてなくて、亜生の頑なに昴生を褒めちぎることによって生まれるジャニーズと昴生の見た目のギャップなんですが、それが品を変え味を変え次々繰り出してくるので、すげー面白いです。「魂の叫び」とでも言うんでしょうか、声高らかに「ブスやねん!」って言うところは同情もあるんですけど、なんか、笑いが上回ってくるんですよね。(これを上沼恵美子は技術、人徳と言っているのでしょうか?)だから、東南アジアとのハーフとか、デブとか、もう傍から見たらただの悪口なのに「魂の叫び」だからこそ笑えてくる。悲哀、喜劇みたいな。これも好き嫌い分かれそうなところですけど、他人の失敗とか容姿っておもしろいじゃないですか。それを上沼流に言うと、暗い自虐なのか、笑いに出来るだけの突き抜けた技術力というのか、ミキは後者に転んだと見る。それを可能にしているのが、「亜生は本当に兄ちゃんのこと好きなんだろうな」というところから来る微笑ましさに支えられてると思ってて、単純にブスの人の履歴書をジャニーズ事務所に送ったら単なるさらし者じゃないですか。でも、亜生は兄弟だからこそ本当に兄のことを「優しい」と思っていて、それでジャニーズに行けると信じているからこそ、昴生とのギャップがさらに捻れて笑いをを加速させてるかのよう。素晴らしかったです。去年に引き続き決勝に来れたというのも、ミキの実力のなせる技だと思っているので、その動向をみんなで見守りましょう。

 

 

 

⑧トム・ブラウン

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http://www.kdashstage.jp/profile/archives/23

いやー最高ですね。やっぱりM-1グランプリには一組はこういう壊し屋みたいな漫才師がいて欲しいところです。ネタ番組にはちらっと出てきているので、知っている人は知っているかもですが、まぁほぼ知名度はゼロだったでしょうね。とんでもない爪痕を残していました。いやー面白かったなぁ。

 

ネタ『中島MAX』

 

「サザエさんに出てくる中島くんを5人集めて中島MAXを作りたい」

 

えっ。

 

完全に客席も「やべー奴が出てきたな」という空気感が満載で、1番最初の「キャーー!!」っていう掴みが肩透かしになってしまったのがとても残念。あそこでグッとみんなのことを引き込みたかった。ネタが始まってからも、爆発するまでの助走が少し長めだったかも。ただ、1回ハマると、もうずっと笑いが続いていくので最終的には会場ごと笑いに包めたのは大成功でしたね。

ナイツ塙のネタの見方が秀逸で、言われてみれば確かに、「ツッコミの布川くんはどういう目線でそれ説明してんだよ」ってなる。その目線踏まえもう一度ネタを見返すと、倍笑えました。初見ではやっぱり、ボケのみちおくんの方に目が行きがちだったんですけど、流石に目の付け所が違うなぁと思いました。まぁ、ネタに関しては「中島」という題材を軸に、どんどん色んなものが合体していくタイプのネタで(どんなネタなんだよ)、5人登場のシーンがフリで、合体後がボケっていうのを繰り返してるだけなんですけど、もうこれがおかしい可笑しい。志らくさんも言ってましたけど、「なっ、なん、なんなんですかあなた達は!?」といった感じで、「お前らずっと何やってんだよ」のパワーがえげつない。トム・ブラウンのネタに関してはもう、1番最初の前提部分が一番狂っているので、そもそも中島MAXなんてものはないし、中島くんは五人居ないし、アニメだし、なんでその中島MAXが作るの難しいこと知ってんだよとか、もうツッコミだしたら止まんなくて、でも、いつの間にか合体することに対してだけは普通に受け入れてる自分がいて、「今回のM-1グランプリでは、何回この感情味わうんだよ!」というところ。人間の適応能力って凄いな。

あと、トム・ブラウンで嬉しいのは最後には中島MAXが登場してくれるのも良いですね。「いや、最後は普通に出来るんかい!」ってところと、「バットをブルンッと振って中島MAX!」と言い張るしょうもなさに加えて、布川さんが、「ヨッシャーー!!」って言ってみちおの頭引っぱたいて喜ぶところとか、もう本当に頭の中がパニックですよ。嬉しいんだか、わけわからないんだか、おめでとうなのか、感情ぐっちゃぐちゃ。凄かったなぁ。あっ、それと、忘れてはいけないのが「ダメーーー」のツッコミか。頭を覆うっていうツッコミは見たことがなくて、それにしたってどういう目線で「ダメーーー」って、ツッコミを入れてるんだっていう。なに?中島MAXの審判的な目線なの?それともふざけて変な人を呼び込んでるみちおに対してのダメだし?もう、言葉で説明しようとしたって、脳が追いついてこない。4分間でこんな気持ちにさせられるなんて、助けてください、マジで。審査員との絡みでみちおが放った「しかも、土の中からですよ(加藤一二三が出てくる)」は、今日イチでウケてましたね。あの瞬間は会場中が「2本目を見せてくれえぇ」とシンクロしたことでしょう。とりあえず、バイトをやめてお笑いで食べていけるくらいには年末のネタ番組とかで絶対呼ばれると思うので、これからもたくさん合体してください。めちゃくちゃ面白かったです。

 

 

 

⑨霜降り明星

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https://profile.yoshimoto.co.jp/talent/detail?id=5087

今大会で1番若い25.26歳のコンビ。粗品もせいやもR1ぐらんぷりで決勝進出しているし、粗品はオールザッツ漫才で優勝してるし、せいやはすべらない話でMVS取ってたりするんで、お笑いポテンシャルエグすぎ。M-1グランプリちょい前くらいから、ツイッターの人から「面白いラジオ教えて」って言って教えてもらったのが霜降り明星のラジオで、ここ最近聞いていたので、なんか勝手に「うおおおおおおお!」ってなってました。実際、めちゃくちゃ面白いですよ。去年のM-1グランプリで落ちた時の話なんかを聞き直すと感慨深いものがあります。(ちなみに去年はせいやが崩れ落ちてマジ泣きしてるところを天竺鼠の川原に尻を蹴られたり、粗品が「なんかムカつきますねぇ〜来年は出ませんねぇ〜」とかいう謎の尖り方とかしてたので、ぜひ聞いてみてください。)

 

ネタ『豪華客船』

豪華客船という題材の中で、せいやのキレのある動きのボケと粗品の鋭いツッコミが冴え渡りまくっていた。今回のM-1グランプリの中で1番会場を揺らしていたんじゃないでしょうか。粗品のツッコミで確実に落としてくれる安心感があるので、オール巨人も言っていたけど、「粗品のツッコミを待つ」瞬間が生まれる。そしてそれが、「想像より上をいくツッコミ」をしてくれるから、こちらとしては「早く聞かしてくれぇ〜」ってなるし、「そうくるんだ!」と納得した上で、改めてボケのせいやを見て二度笑う。一発のボケの中で連鎖的に笑いが飛び火していって、さらにその飛んでくるスピードもめちゃくちゃ速いから息をつかせぬままずっと面白い。粗品のツッコミも見事だけれど、せいやも良いよなぁ。「キッズダンサーの笑顔」とか実際見た事ないけど「それっぽい」と思わせる迫力があるし、日付変更線で遊ぶバカ船長の出で立ちも良い。「アホそうだな〜コイツ」と思わせる能力に長けている。ステージを大きく使っているから見ていて絵面的な意味でも飽きが来ないし、「それぞれの場所で何が行われているか」という群像劇的な意味でも、場所がある程度固まっていることでボケが際立つ。さっきまではサボテンだったのに、扇になってる(一人増えてる!?)とか、リアス式海岸に突っ込んだりしているアホ船長も「その辺の場所にいるのか」って見えてくるので、相変わらず馬鹿なことやってるなぁって、楽しくなってきちゃう。「おっ、やってるねぇ」みたいな、まあ、そんなことは漫才を見ている最中には気にならないんだけど、何回か見直しててそういう所も魅力に感じました。もうフリとかはほとんどなくて、ボケ!→ツッコミ、ボケ!→ツッコミっていう超ストロングスタイル。とにかくずっとボケてるしツッコんでる。粗品のツッコミのワードセンスも光るところなんだけど、ボケの着眼点が良いですよね。豪華客船でいうと、日付変更線とか、オーラツーステインクリアとか、同じこと言ってるのに揉めてるなんてのも、バカバカしくて笑える。確かに、冷静に見てみると「おもしろ豪華客船のメンバーってどんなの?」という大喜利に対するアンサー的なボケとツッコミ(つまり単発単発)に見えるかもだけど、「それでもいいぜ!」って思わされる勢いとパワーがありましたね。漫才が上手いということは、その影に隠された努力が見え隠れしてしまうことと紙一重ですが、(その点でいうと、志らくが言うようにかまいたちはめちゃくちゃ上手い。)霜降り明星の場合は上手い下手以前に二人ともが強かった。ナイツ塙も二人のことを「強い」という言葉で評していましたが、確かに二人の漫才は強かった。上手い下手とかではなく、強い。このベクトルで戦ってこられたら、これまた違う評価をつけざるを得なくて、漫才を見て「強い」と思わせることに成功した2人が一位通過していったことは当然の流れだったのかもしれません。

 

 

 

 

⑩和牛

 

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https://profile.yoshimoto.co.jp/talent/detail?id=2882

毎年準優勝という辛酸を舐めさせられ続けてきた和牛。毎回上質なネタを持ってくるので、M-1グランプリ後の打ち上げ配信では「東野圭吾なんよぉ〜」と言われていました。ヒット作連発、何書いても面白い。千鳥ノブをしてこう言わしめているし、事実、M-1グランプリの決勝には毎回進出しているあたり、本当に漫才会の東野圭吾なのかもしれない。

 

ネタ『もし、相方がゾンビになったら』

と、上では期待を煽る書き方をしたものの、個人的に和牛はあまり合わない、ということを先に言っておきます。これはもう、本当に好みの話だし、生き方の話だと思うんだけど、和牛ってすごい面白いんですよ。ネタの構成も凄いし、それをスラスラ頭の中に入れてくれる話術もレベル高いし、二人のキャラクターもネタにマッチしてる。そう、ネタにマッチしてるだけに、そのネタの題材でちょっと「ウッ」ってなっちゃうんですよ。今までのM-1グランプリで見てきた和牛の漫才って、誤解を恐れずにいえば、いちゃもんと揚げ足取りの究極面白い版みたいな感じだと思っていて、見てて「もうやめてあげてくれぇ…」となってしまうことがあったんですよ。でも、今回の「ゾンビになったら俺を殺してくれる?」ってのはその路線とは少し毛色が違ったかなぁ。だから、今回楽しく見ることが出来ました。志らくが言うように品があるから、今までの漫才も見れたし、「ゾンビ、殺す」といった物騒なワードが冒頭から連発されていても嫌な感じはしない。「そこからどう広がっていくんだろう?」っていう期待感が嫌悪感を完全に上回る。それで、今回の和牛の漫才で凄いと思ったのは、本大会で唯一「オチで大爆発させた」点。本当に最後の最後で大ウケが取れたのは一本目の和牛くらいかと思われます。完全に騙された。いや、騙されたというかなんというか、とにかく和牛の思うように見させられました。これを狙ってできる技術と構成がとんでもなく高水準なんだなぁと感心するばかりです。ただ、やっぱり途中で水田がキレたところとか「怖」って思っちゃうんですよ、どうしても。川西がほんわりしてるのでその怖さもジョークで済んでいるけども。もう、こういう感情を持ってしまってるのでしょうがないかなとも思うんですけど、本当に面白いと思うんですよ。面白いということが分かってるがゆえに、変なところが気になって素直に楽しめてない自分が悲しい。うぅ…

 

 

決勝ラウンド

 

予選ラウンドで大体話したいことは話したので、簡単に。

 

ジャルジャル

何回か見た事あるネタだったけど、相変わらず面白いですね。本当にずっと二人で何やってんだよ!でも、実はめちゃくちゃフリと裏切りがハッキリしてるネタでもあるんですよね。変なことやってる!と見せかけて、すごくしっかりしてるネタ。話題のバカバカしさと正統派をかけあわせてこんなにアホらしい舞台を作り出せるのはジャルジャルならではでした。

 

 

和牛

あー、この感じの和牛が上記してた「変なとこが気になってネタをダイレクトに受け取れない」ってやつなんですよ。「お母さんかわいそうじゃん!」って思っちゃうんですよ。ネタだからそんなこと思う必要全くないのは理解しているんですが、脳では理解してても心がそう感じてしまってるんですよ。こういうことあんまり書かない方がいいかな。でも、どうせ個人の感想ですし、大会も終わったので書きますけど、このネタって単純に見たら「我が子を思う親の心を弄んでる」ネタですよね。これを漫才に乗せて架空で演じるから、胸クソ悪い感じでは終わらないけど(親の反論としては川西が代弁してくれるから)、謎のリアリティがある分、タチが悪いんですよ。水田が論破するかのような口調で話すのと、川西が押されてる弱い立場のお母さんを演じることによって、あたかも目の前でそれが本当に行われてる感じに見えちゃう。現実世界で、目の前の知らん人でも息子が親のことをのしてる姿ってなんか嫌じゃないですか。これまた「やめたげてよぉ…」って思う。和牛が二人とも上手いからそんな風に見えちゃうんだよな。こういうネタはリアルにやればやるほど面白さが増すということは分かりつつ、リアルに近付けば近づくほど現実世界がチラついてきちゃう。まいったな。こんな目線でネタを見たくなんてないのに。フィクション、ファンタジーの世界ってことをみんな知りながらその世界を楽しんでいるのに、一人だけ取り残された気分だ。こういう形でネタを見てると、最後に川西が病気になったフリをした時も、「そう来るよな」って思っちゃうし、水田が電話かける時も「これホントはかかってないんだろうな」とか余計なこと考えちゃうんですよ。良くないですね、マジで。面白いことは分かってるのに、どうしてこんな気持ちにならないといけないんだ。。

 

 

霜降り明星

霜降り明星の鉄板のネタ。予選ラウンドの勢いそのままにずっと面白いままでしたね。個々のボケのクオリティも高水準で、先生が厳しすぎるのとか、しょうもない人生!とか、7代目ひょうきん者!とかワードもボケの種類も多様でフルコースみたいな感じ。この辺りで気が付くんですけど、霜降り明星ってボケと同時にツッコミを入れたりもするんですよね。普通はボケ終わってから、あるいはボケから一瞬遅れてっていうのが常道かと思うんですけど、完全に同時ってのは珍しい。分かりやすいのは最後の「冷房効きすぎる」ですけど、ここまでになってくると観客も笑い方が分かってきてるというか、そういう新しいことやっていても違和感なくすんなり受け入れる土壌ができてました。色々なタイプの笑いの取り方でくるから、誰かしらどこかのポイントにハマるでしょう。しかも、それが全部高水準ときたもんだ。個人的には文句無しの優勝でした。本当におめでとうございます!

 

 

 

終わりに

 

色々と書いてしまいましたが、冒頭でも言った通り、M-1グランプリに出る時点でとんでもなく面白い人たちですし、笑いを茶の間に届けるなんて尊い商売他にないですよ、本当に。だからこそ、私は芸人さんを一番尊敬していますし、事実、辛い時はお笑いに助けられてきました。今後もめちゃくちゃ面白いお笑い見させてください。本当に最高でした!!ありがとうございました!!M-1最高!!