土手

みんな集合だよ~

キングオブコント(KOC)2017の感想(1万字超えのため余裕のあるときにでも)

はじめに

 

f:id:inu_kiss_november:20181021110244j:plain

 

毎年の楽しみのキングオブコントを観終えました。
今年は近年稀にみるとんでもない展開でしたね。

確かな実力者であるかまいたちの優勝で幕を閉じましたが、
多くの人はにゃんこスターの印象を強く抱いたことでしょう。

そのあたりのことも含めて、感想を書いてみたので、よろしければ読んでみてください。

(※特定の芸人を貶すなどの目的は一切ありません。あくまで私個人の感想です。芸人という職業は一番最高だと思っています。いや、本当に。)

 

 

わらふじなるお

 

トップバッターでしたね。やっぱり、トップでやるとお客さんの空気も温まっていなかったり、
その日の審査の基準として見られちゃったりで、出順としてはあんまりもらいたくないのかな〜って感じ。

ただ、ネタを見てみるとかなりトップバッターに相応しかったんじゃないかと思います。
ネタは、今日で退職するから最後の仕事でめちゃくちゃやってやろうと思ってる電話オペレーター。
この設定は非常に日常感に溢れてると思います。
誰だって、今日が最後と思うと謎のテンションになったり、普段できないようなことも出来たりする。
経験はないにしても、心の中で「わかるわかる」という共感、頷きを得られる様な設定だったと思います。
2人の空気も明るく、良い大会のスタートが切れましたね。

なので、トップバッターとして、お笑いをこれから見るぞ!という気分にさせてくれるネタの題材としては全10組の中でもピッタリでした。
(もし、他にやれるとしたらGAG少年楽団でしょうか。)

あとは、その設定の中で、どれだけ笑いに繋げることができるか。

ネタとしては、めちゃくちゃ加減が少し物足りなく感じました。
もっとむちゃくちゃしちゃっても良かったと思うんですけど、電話越しのむちゃくちゃと考えると
あれくらいが限界なのかな。。

 

設楽:87

日村:89

三村:88

大竹:87

松本:83

合計:434 (ファーストステージ6位)

私:86

 

ジャングルポケット

 

ジャングルポケットは去年のキングオブコントでは、ライスと点差の2位。
去年のジャンポケの一本目の出来が非常に良く、二本目にもそのクオリティを期待してしまったせいか、
二本目でかなり気持ちの良い裏切りの笑いを提示したライスに敗れてしまいました。

ただ、ここ最近のジャンポケは仕上がってる感がエグい。
特にジャングルポケットは、誰も傷つけないお笑いを提示しているところに好感を持てます。
そのことは常に念頭に置きながらネタを作ってそう。

今回の一本目のネタは、エレベーターを使って上に行きたいのに、目の前で痴話喧嘩が始まってなかなか行けないというもの。
うん。面白そうな設定。最初は、兎にも角にも急がなければいけない会議があるからと上に行きたかった斉藤が、
「兄妹」「義理の」といった、目の前のふたりのとんでもない関係性が顕になるに連れて、その行く末を見てみたくなるのは笑いました。

ただ、松本人志が言っていたように、もっとエレベーターの特性を活かせたら笑いの数が増幅したかも。

個人的には、もうふたりの行く末を見ると決めた斉藤が、たっている状態からあぐらになって一気に座って、エレベーターにガンガン挟まれながらも「関係ない!もう・・・関係ないね!!!!」とか言っている絵面が想像出来たので、そういうシーンが見てみたかった(笑)

また、ジャングルポケットはトリオです。
斉藤、太田(ネタ作り担当)、おたけという三人組ですが、今まで見てきた感じ、どうしてもおたけのウザさが気になってしまう。
ネタ後のトークでも、おたけはネタ作らないくせに役に文句を言ってくるみたいなエピソードが暴露され、
会場の笑いを誘っていましたが、私的にはただただ、「イラッ」としてしまいました。
ネタ中でも、そこまで良い存在感を発揮できているとは思えないだけに、
単純にワガママ言っているに過ぎんと感じましたし、「いやいや・・・あなたね・・・」となりました。

まぁ、この評価はジャングルポケットの二本目を見て、ちょっと考えが変わるのですが。

 

設楽:93

日村:92

三村:93

大竹:89

松本:85

合計:452 (ファーストステージ4位)

私:90

 

かまいたち

 

優勝したかまいたち。

終わってみれば横綱相撲をしていたように思えます。

後述するにゃんこスターによって、またしても世間は「優勝したかまいたちが売れなくて、にゃんこスターが売れるんでしょ?」などと宣っていますが、「いや、そもそもお前らテレビそんなに見んのかよ。」と言わざるを得ないし、かまいたちは今回の結果でもハッキリしましたが、ネタもトークも面白い。小籔千豊が言うにはロケも面白いと言うのだから、売れない理由はないでしょう。ここで言う“売れる”というのも、テレビで見る機会が増えるということを指しているだけに、微妙な気がしますが…

芸人としての原点はネタにあると思っています。どのような形であれ笑いを多くの人に届けることは素晴らしいのですが、
テレビシーンに移行するとどうしても芸人がネタをやる機会というのは少なくなっていくんじゃないか。
私がライブに行かないだけで「いや普通にやってんから!!!!何も知らずにほざくんじゃねーよ溝鼠が!!!」と思われた方もいるかもしれません。

私くらいの知識だと、かなり売れてる人でずっとネタをやり続けているのは、爆笑問題、さま~ず、バナナマン・・・とか??
なんだろう。いつ頃からか、テレビから消えた芸人とか、最近見なくなった(多分テレビを指す)ってすげー言うようになりましたよね。芸人が出続けてるライブで、
または営業先で見なくなったら本当に“見なくなった”かなと思うのですが、やはりそこに認識のギャップは感じてしまいますね。

話が逸れました。

ネタは、校内のマドンナから告白を受ける練習をしている冴えないやつ。

かまいたちのネタって、冴えなさそえなやつがよく登場してきて、そいつの性格がまたことごとく曲がってたりしてすげー面白いんですよね。
有名なのだと、ホームルームのコントですかね?

 

今回のも、また見るからに冴えなさそうなやつで、それを山内がやってるともうガッチリハマってて。
最初は告白の練習をしている痛いやつがなんか変なことしてる(笑)だったのに、
それが段々と、練習を覗くやつを痛めつける練習をし始めるという狂気とも取れる方向へ転換していく。

「さっきからコソコソ覗いてるお前〜!!」

「分かってんねんぞ!!」

これが、練習なのか本気なのかどっちつかずで分からない。
ただ、会場もそうだったし、ネタ終わったあとのトークでも松本人志が言っているように、この狂気の部分が一番盛り上がったし、ウケていた。
笑いは裏切りと緊張と緩和とよく言われる。
まさにそれを体現しているかのようなネタだった。

 

設楽:90

日村:93

三村:95

大竹:93

松本:93

合計:464 (ファーストステージ2位)

私:94

 

アンガールズ

 

 

アンガールズが賞レースの決勝にいる!!っていう事実。バナナマンの設楽さんもラジオで言っていたが、
アンガールズがキングオブコントの決勝にいるという事実が、この大会に一つの箔を付けていると。
確かにアンガールズは今やテレビで見ない日はないと言っても過言ではないだろう(まぁ、田中の出演が圧倒的に多いわけだが)。

このレベルの芸人が賞レースに出るということには、リスクもある。後輩に負ける可能性、業界関係者からの目線が変わること、ネタのためのスケジュール調整などなど。
そんな芸人がリスクを取ってでもキングオブコントに出場した、そして実力で決勝に行った。
アンガールズは実は2016年にもエントリーしていたが、準決勝で敗退している。
その悔しさをバネに、翌年に見事リベンジを果たして決勝に上がったアンガールズに、まず賞賛を送りたい。

また、アンガールズは2000年代初頭にショートコント中のジャンガジャンガで一世を風靡した。
出てきた当初は「キモかわいい」という新たな言葉を引っさげて大人気だったが、
今は「キモかわいい」から「キモい」部分を濃厚に抽出してきてお茶の間の人気者だ(多分)。
ただ、そうやって受け入れられているのもその背景には依然として「キモかわいい」部分が残っているのだろう。
だからこそ、ただのキモいで終わらずに、それを笑いへと昇華させられているのだと思う。

ネタは、ビーチにナンパしに来た二人。

開幕当初から相変わらずのガリっガリさに笑ってしまう。ただ、全体的に今一歩何か足りない印象を受けてしまう。
ジーパンを上手く服に見せるところが一番ウケているように感じたが、その瞬間最大風速もそこまで大きくはなかったように思う。
もちろん、なんか気持ち悪いけど笑えるし、ほとばしる田中のキモさも際立っていた。
でも、その部分しか見えなかった。

見えてくるのはアンガールズ二人の気持ち悪面白いというところで踏みとどまってしまっていて、
どうしても期待を込めて見ていたこちらの予想を上回りきれてなかったのではないか。
これだけ知名度のあるアンガールズだから、入れてはいけないと思っている先入観も出てきてしまう。

山根は結婚してるし、田中も別にモテない訳ではない(独演会とかやると女性がめっちゃ来るらしい)。
そういったバックボーンを考えてはいけないと思いつつも、どうしても考えてしまう。
こちらとしては、そんな先入観もぶっ壊すようなネタが見たくて、その分期待値がかなり高く設定されていたことは否めない。
私はアンガールズのかくれんぼのネタが非常に好きで、それはキモさが先行してなくて純粋にネタが面白くて、その類のものが見たかったな〜

 

 

設楽:89

日村:92

三村:92

大竹:92

松本:89

合計:452 (ファーストステージ4位)

私:88

 

パーパー

 

正直、どう言ったらいいのかよく分かんなくて。

とりあえず、私はパーパーをキングオブコントで初めて見ました。最初に見終わった感想としては、「やっちまったなー」って感じがあって。
今年は男女コンビが初めて決勝に進出した(しかも二組)年で、それを聞いた私は「へーそうだったんだー」と思って楽しみにしてたんですよ。
余計な先入観を入れないために、ネットでググることもしませんでした。なので、煽りVTRだけの情報でネタを見ました。雰囲気はめちゃくちゃあると思います。

女(あえて女性と言わずに女と表現させてもらいます)の飄々した感じと、男の闇抱えてる感じ。
立ってる感じで、コントの雰囲気を出すことには成功してたと思います。
ただ、そこから跳ね上がるところがあんまり無かったかなーと思ってます。

ネタは、卒業式で第二ボタンが余っている男。
ネズミ講式女紹介システムには笑いましたが、なんかその部分もうまく笑いの波に乗せきれてない印象。
あと、このネタに至っては、女の役割がなさすぎる気がしました。ただ突っ立って話してるだけに見えちゃう。
男の方も、声が特徴的なのは良いんだけど、ぶっちゃけ聞き取りずらい… 滑舌の問題なのかな。
別に滑舌をポイントにしてるようなネタではないから、絶対に伝えたいボケのポイントは確実に伝わらないといけないと思ってるんだけど、それ大丈夫だった?
私は正直、聞き取りにくくて、スーーっと笑いに繋がらなかった瞬間があったような気がしています。
審査員の評価もやはり厳しめに付けられてて、まぁそういう感じになるよねってところ。

ゴッドタンで見た女に20万貸すコントは面白かったので、今後に期待。
男の方の大喜利とか見てみたいわ。

設楽:85

日村:86

三村:85

大竹:85

松本:80

合計:421 (ファーストステージ9位)

私:80

 

さらば青春の光

 

さらばはもう賞レースの常連ですよね。

M-1にも出るし、キングオブコントにもバンバン出てる。ただ、優勝はまだない。
毎年、良いところまで行く実力はあるのに、最後の一手が足りない。さて、今年はどうなるか。
ネタ作成者の森田は設定、ギミックを作り出す能力にかなり長けている。
いたトンを初めて見た衝撃から、それ以降も魅力的なネタを数多く作っている。

ネタは、ライブ感で追加注文を取らせようとする居酒屋。
上記したように、さらばはネタのギミックが判明してからが勝負。
今回の場合だと、一旦料理を出し間違えるフリをすることで、客の眼前に出来立ての料理を見せ、そのライブ感を出汁に追加注文を取らせようとするというもの。

この設定が判明するまでのフリがとてもワクワクする。
次はどんな設定なんだろう?と。
段々、「おや?なんか変だぞ?この居酒屋」という我々と同じ視点で森田が翻弄される様は、非常に面白い。

コントの設定って「あーー!そういうことー!!」と納得して終わってしまうものがたまにあって、
そこからの笑いに上手く繋がらないパターンもあると思っています。
さらばの場合はこの繋がりはスムーズに行くことが多い。だからこそ、ギミックが判明したあとのもう一捻りが大事になる。
今回のネタの中では、そのもう一捻りがちょっとねじり不足だった気がする。
それでも、勢いそのままに最後までギリギリ乗り切った感もあるので、うまく決勝まで行けたなーって印象です。

設楽:90

日村:93

三村:87

大竹:90

松本:95

合計:455 (ファーストステージ3位)

私:91

 

にゃんこスター

 

今大会のダークホース。そして、おそらく一番印象を残していったコンビでしょう。
このコンビについてはどう言ったらいいのやらという感じなんですけど、自分が思ったことを書きますね。
まず、完全に初見というわけではないんです。
というのも、スーパー三助が以前組んでいた”アンドレ"というコンビのネタを見たことはあったからです。
アンゴラ村長も、生大喜利でそういった人がいるということは知っていました。
ただ、にゃんこスターとしてのネタは見たことがありませんでした。
そういった意味では、スーパー三助がアンドレ時代にやっていたネタがむちゃくちゃだったので(もちろん良い意味で)、
その路線で来るのかなぁと思ったりしてました。

 

ネタはリズム縄跳び。
まず、初っ端からスーパー三助の棒読みとも言えるような絶叫に近いセリフからコントがスタート。
この時点で、「あれ?今までのコント(さも、いそう、というか、実際の人物を用いたフィクションの世界観)とは、なんか違うぞ?」という印象を持ちます。そして、リズム縄跳びという聞き慣れない単語を用いて勝手にコントを進めていく三助に、我々は付いていくしかない。我々はもう既ににゃんこスターのファンタジーに付き合うしかないのである。

大塚愛のさくらんぼに乗せて、リズム良く縄跳びを飛ぶアンゴラ村長に、「なるほど。これがリズム縄跳びなのか」と、そう形容するしかない特技をしばらく見続けます。サビが近づくにつれ、テンポが速くなる縄跳び。三助が「サビが来る!サビが来る!」と煽ってくる。しかし、サビでは全く縄跳びを飛ばない。憎らしい顔をして謎のダンスを踊るアンゴラ村長に、三助は「サビで、縄跳び、とばなーーーーい!!!」と、それはもはや、ツッコミではなく状況説明だろということを言う。おそらく、正しくツッコむとすると、「いや、縄跳び飛ばないんかい!!」ってなものだが、にゃんこスターは「サビで縄跳び飛ばなーい!」と言う。これは、冒頭で説明したように、我々は既ににゃんこスターのファンタジー世界に足を踏み入れており、三助はその世界からのスピーカー、いわば代弁者となっていることが大きいと思う。リズム縄跳びという知らん見世物をこれから見させられる私たちに、それをどのように楽しんだらいいのかを教えてくれる。「なるほど、リズム良く飛ぶのがリズム縄跳びなんだね(説明)」「かわいらしい子出てきたよ〜(これから起こる憎たらしい顔に注目させるための布石)」「テンポが早くなってきた!(サビ前の期待感を煽ってくる。ライブMCのような感じ)」「サビが来る!(どうなる!?と我々の視線を一挙に引きつける)」

そこに来ての「サビで、縄跳び、飛ばなーーーい!!!」である。
これまでの三助の煽りによって、当然予想される「サビでこそ凄いリズム縄跳びが出るだろう」という期待を、吐き捨てるかのように裏切る。全くもって飛ばない。このネタはもはやその一点のボケをずっと貫くわけだが、この裏切りのインパクトが非常に大きい。キングオブコントの決勝という舞台、芸歴5ヶ月、無所属、男女コンビ、にゃんこスターというコンビ名。様々な要因が絡み合った末の着地点が「リズム縄跳びなのに、サビで縄跳びを一切飛ばない」というボケに、我々はもうバカバカしいやら、呆れるやらで感情の折り合いを付けることが出来なくなる。今でこそこうやって分析なんかしてしまっているが、見ている時点では、そんなことを考える隙がない。ただただ、にゃんこスターの世界観にどっぷり浸かって、三助と一緒に「縄跳び飛ばないのーーー!!」と叫んでいる。この一体感はなかなか味わえるものではない。

特にここ最近のお笑いでは“視聴者がフリに気付く”ということが多々ある。漫才なんかを見ていると顕著だが、前半に引っかかったワードなんかをあとで「さっきから気になってたけどそれなに!?」みたいな感じで、ツッコむパターンをよく見る気がする。視聴者はツッコミより先にそのカラクリが起こりそうと予想してしまうと、「はい!やっぱり来た!」と、お笑いを見る立場から、ボケとツッコミを予想する相場師のような目線になってしまい、純粋にネタを楽しむことが出来なくなる。

ここでにゃんこスターを振り返ると、一発目のボケ(サビで縄跳びを飛ばない)が来るまでが壮大なフリである。上記したように、冷静な目線で見ると、「ここまで上手く飛んでるからサビでは上手く飛ばないのかな?」と予想することは出来るはず。
しかし、三助と同じ目線で立つことを義務付けられた我々はそのような事を考えるのは無粋だ、と言わんばかりに、上手く飛ぶリズム縄跳びを期待してしまう。そて、まんまとハマる。直観に訴えかける良い運びだと思う。

一回目のサビが終わり、また鮮やかなリズム縄跳びを行うアンゴラ村長。三助は「それ(上手く飛ぶ)をサビでやればいいじゃない…」と言う。我々も「うむ。確かにその通りだ」と三助と同調し、なぜそれをサビでやらない!と思うことになる。
しかし、ここでもまた三助は、にゃんこスターの世界観の楽しみ方を我々に提示してくる。

「あれ?この動きを求めてる俺がいる!!」と。

「あれ?そうなの?」と。
視聴者を体現する三助がそう言うならば、多分そうだ!俺達もあの動きが見たいぜ!!そう乗せられ、サビが近づくにつれて高まる期待感。今度は「あの動きをやってくれーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」という期待感だ。この時点で一回目のボケとは大きなパラダイムの変換が起きている。一回目は「上手く飛ぶのかな?」という何かが起きることに対する期待感。二回目は「上手く飛ばないでくれ。あの動きを見せてくれ」という期待感。これらは、三助のツッコミ、(というより、煽りか)により導かれ、もはや洗脳に近いような気分にさせてくれる。
そして実際にサビでは全くもって飛ばず、あの憎たらしい顔でダンスを踊るアンゴラ村長。

「ありがとーーー!!」と叫ぶ三助。
それに呼応して我々も「ありがとーー!!」と思う。
なんなんだ、この異様な空間は。
しかし、この感じ、悪くない。面白い!
気が付いたら顔がほころんでいる。まさにファンタジー!

その後は、例のダンスを踊らず、さらに謎の動きを見せたり、伝説の縄跳びを投げ捨てたりと、案外ボケのパターンを見せているが、あまり印象に残らない。もう、このたった二回のボケで笑いが持続するような心持ちがし、あとはそのファンタジーを継続させるだけで十分に思えた。
そして、ネタの最後に星のハリボテを舞台袖から持ってきて「にゃんこスターでした!!」という、オチ(オチ?)。
リアルな人間性を軸にしたコントとはここでも決別をしている。これまでも述べてきたように、にゃんこスターはファンタジーだ。そのファンタジーを終わらせるのもまたにゃんこスターであり、その役割を担ったのがあのオチだったのではないか。自分を三助に投影するかのように楽しんでいた我々にとって、最後に来て「にゃんこスターでした!!」というのは、もはや「我々もにゃんこスターだったのか」という一種の気付きを見せる。だからこそ、「いやいや、なんなんだよ」と大竹一樹が言ったように、そう、なんなんだよ、なのである。だって、私は私であり、にゃんこスターではないのだから。ここで初めて冷静な目線で彼らを見ることができる。ピーターパンに連れられたように、我々はネバーランドの夢を見ていたのだ、と。
設楽統が言っていたが、これは確かに「二本目」が見たくなる。また、違う夢の世界に連れていってくれと願うのだ。夢の世界は全てが自由で開放的だ。また、野性的でさえある。
そして、出順が神がかり的に良かった。おそらくこの7番目というポジションがベスト、正解に近かったと思う。これまで、人間性によったコントを見続けていた我々を、ぶん殴ってくるかのようにもたらされた彼らの衝撃は大きかったように思う。二本目に期待したい。

設楽:90

日村:93

三村:97

大竹:93

松本:97

合計:466 (ファーストステージ1位)

私:95

 

アキナ

 

前項のにゃんこスターがもたらした無秩序とも言える破壊力に、正直飲まれてしまった感が否めない。
アキナは以前組んでいたソーセージが解散し、中の2人でまたコンビを組み直している。ソーセージ時代をあまり知らないだけに偉そうなことは言えないが、アキナとなってから快進撃が続いている気がしている。キングオブコント決勝、M-1決勝。〇〇組の芸人がエントリーしてくる中、決勝の10人ないしは8人に残るだけで快挙である。芸人たちが言うように、「その場その瞬間に一番ウケたひとが優勝をする」のであって、別に最下位だったからと言ってその芸人が面白くないということにはならない。もう、決勝にいる時点で抜きん出た位置にいるからだ。

アキナのネタをたくさん見ている訳では無いのだが、アキナを語る上で「狂気」は一つのワードになると思う。私が初めて見たアキナの“狂気”はキングオブコントの「取れへん」だった。
小学生の設定であるはずなのに、どこか大人を馬鹿にしている風に見えるあの姿は、「小学生なのに生意気な」という奇天烈な面白さと、「えっ、なんなのこの子・・」という狂気を孕んでいたように思う。

今年のネタは特にその狂気の部分を隠さずに、むしろ「その狂気を楽しんでほしい」と言った感じのネタだった。
”サイコパス”という言葉がいつ頃からか、医療関係者だけではなく、一般の人々もしばしば使うようになった。

 

サイコパスとは精神病質、あるいは反社会性人格障害などと呼ばれる極めて特殊な人格を持つ人々のことを指す言葉です。

そして、サイコパスの特徴を一言で表すなら、
良心や善意を持っていない
ということです。

-http://www.psy-nd.info/property/whatis.html-より引用

 

私の感覚値になってしまいますが、サイコパスのイメージは以下のような感じです。
・うまくコミュニケーションが取れない人
・意思疎通がうまくできない人
・世の中にある当然と認識されている価値観に当てはまらない人

それを踏まえてアキナのネタを見てみると、やはりサイコパスだなぁという印象になります。ただ、アキナのネタを「サイコパスの人」ということだけで見ると、別にボケてもないし、ただただ怖がっているのみになってしまいます。アキナのネタでは、その点、二人の声のトーン、キャラクター、1シーン毎に暗転させ(怖さを煽るBGM付きで)るコントの見せ方で笑いに昇華できているのかなと思いました。もし、あのコントの1シーンだけを見せて終わっていたら、世にも奇妙な物語とかそういった世界観になって、コントとして不十分だったと思います。しかし、1シーンごとの区切りを入れつつ、話を展開させていくことでコントの世界観を作り上げることに成功しています。

ただ、どうしても「サイコパス大喜利を見せている」という印象が拭えなかったのも事実だと思います。もちろん、それはそれで面白いのですが、一つ一つのシーンを切り出してボケを見ていくと、コントの世界じゃなくても通じた部分があったんじゃないか。それは逆に、コントじゃなくても良いという話になります。なので、コントを見ているという立場からすると、アキナのネタが優勝することはおそらく「ナシ」なんだと考えています。確かににゃんこスターの後で点数が振るわなかった説もあるのですが、多分それがなくても突出した評価は得られていなかったのかなぁ・・・と思いました。

設楽:90

日村:82

三村:83

大竹:87

松本:90

合計:432 (ファーストステージ7位)

私:88

 

 

GAG少年楽団

 

何回かコントを見ていますが、「安定している」という印象です。
キャラクターもわかりやすいし、ネタも面白いです。
トリオという点で、コンビにはできないトリオならではのコントもやっていると思います。

しかし、GAG少年楽団は良くも悪くも安定しすぎています。
私が今まで見たネタは面白かったし、笑いもたくさん起きていました。ネタ番組とかライブシーンでも、おそらくドンズベリすることはそんなにないんじゃないかな。ただ、大旋風を巻き起こすこともなさそうと思えてしまいます。誰も傷つけない良い笑いだし、台詞回しでひっかかるポイントもいくつかあります。その点は評価に値するし、事実、それは評価されてきてキングオブコントの決勝にまで上がってきました。けど、「多分、優勝することはないだろうなぁ」と予想していました。

実際、結果だけを見ると決勝の中では最下位です。
どこかで上述しましたが、「キングオブコント最下位だからといって面白くない」なんてことがあり得るはずがありません。GAG少年楽団は面白いです。
今回のネタだって、「幼馴染の関係性をずっと保っていたら」という設定のコントで、面白いところはたくさんありました。
高校生くらいまでなら微笑ましかった男・男・女の関係性も、初老くらいの年齢になると一気に状況が異なってきます。その中で生じる様々な問題点を、うまくボケ→ツッコミで笑いに変えていて、とても面白いネタでした。安定していて、安心して見ることができましたが、こちらの想像を超えるような裏切りはあまり見れなかったです。台詞回しなんかでは笑いましたが、そのあたりで落ち着いてしまった印象でした。

 

設楽:86

日村:85

三村:82

大竹:84

松本:82

合計:419 (ファーストステージ10位)

私:84

 

 

ゾフィー

 

完全に初見です。名前も聞いたことありませんでした。
ネタ前の煽りVTRでは、上田さんが(ネタ作成する方)、一日8時間以上ネタ作成して、月に200本以上のアイデアを生み出すということでした。
なので、「おお~。その中で一体どういったネタをやるんだろう」というワクワクした気持ちで見ていました。

ネタは「母親のことを飯を作る人と思っているやつ」。

見てて思ったのは、「あ~今年のネットで荒れるネタはこれか~」ということ。
「面白くない」「つまらない」とかで炎上することは賞レースという特性上、仕方ないです。
というか、ネットの炎上なんてそんな大したことないですしね。
普段お笑い見ない人がちらっと見て、「つまらん」とか言ってツーンとしているだけなんで。

ただ、2013年のアルコ&ピースが披露した「受精」のコントみたいに、ネタそのもの以外の部分で
叩かれてしまうことがあるんですよね。
そういう意味では、今年のゾフィーのネタは「男女差別」「女性蔑視」という側面が取られたら
多少炎上しそうだなぁと思った。ちなみに、実際ちょっとだけ炎上したらしいです。
ただ、放送時のTwitterなんかを覗いていると、良識者がたくさんいて安心しました。
ゾフィーのネタは、「母親のことを飯作る人と思いこんでいるやつを、駄目だろ(笑)」といって
笑うやつなので、ゾフィー自身が母親のことを飯作る人と思い込んでいるわけがないんですよね。
いや、こんなこと言わずとも、もはや言及することが野暮かと思うんですけど、一応言っておこうかと。

それで、ネタなんですけど、キャラクターが面白かったですね。
なんか表情が良くて、マジで母親=飯作る人と思ってそうで、謎のリアリティがありました。
でも、ネタ主軸の飯!一辺倒で攻めていくのはちょっと限界があったんじゃないかなぁ。
なんにつけても飯!を何回も見せられると、テンドンだとしてもちょっとくどさが出てきてしまった印象。
特に、ここまで九本のネタを見続けていた我々にとっては、ここまで一辺倒のネタを見せられると
食傷気味になってしまうのもしょうがなかったかもしれない。
しかし、順番どうあれ、この順位くらいになってたと思いました。

 

設楽:85

日村:85

三村:82

大竹:86

松本:84

合計:422 (ファーストステージ8位)

私:85

 

 

ファイナルステージ

 

ファーストステージの結果、決勝に進んだのは
アンガールズ、ジャングルポケット、さらば青春の光、かまいたち、にゃんこスターの五組でした。
それぞれについての感想を述べます。

 

アンガールズ

 

ネタは「昔の交際相手が結婚したから、その旦那をストーカーしてチャンスをうかがうやつ」。


「おれは、法の中で、暴れてる、だけ~~~!!!」

いや~このセリフはかなり良かった。
キングオブコントの中で一番印象に残ったセリフだった。
これをあのシチュエーションで田中が言うのが非常に良かったよね。
こういうところを見たかったんだよ。
キモさ+笑いで、もう力で持っていく感じが。
アンガールズって、キモさ先行で評価されがちだけど、一個一個のセリフがだいぶ長いんですよね。
得もすると、それはくどくなりがちなんだけど、アンガールズには長台詞がよく似合う。
長台詞を聞き入ってしまうって、それはつまりアンガールズの世界観に釘付けになっているということの裏返し。
私は一本目より二本目のほうが断然好きです。
アンガールズらしさがきれいに出ていたと思います。

 

設楽:93

日村:93

三村:87

大竹:89

松本:90

合計:452 (ファイナルステージ5位)

私:91

 

ジャングルポケット

 


おたけが無能なのに、目立とうとしてムカつく的なことを書きましたが、
2本目を見てみたあとだとちょっと印象が変わりました。
確かに、担っている役割としては、ほぼほぼセリフが二、三個あるだけで、
それをタイミングよく言っているだけに見えます。
しかし、二本目のコントである「ロッカーに逐一ガシャーンってやってくる野郎」の中で、
演じているヤクザの親分の設定だと、おたけの良さが出ていました。
本来、ヤクザの親分は無慈悲で冷酷で残酷な、危ないやつという印象が強い。
けど、そんな怖いやつが「ガシャーン」を全然止めないどころか、タイミングを外しまくっている。
ここに一つの笑いのポイントがあって、その後に判明する、「や~~め~~ろ~~」が、
実はロッカーに叩きつける音に反応しているというのが分かったときに、笑いが爆発します。
このヤクザのヘッポコ感は、多分、斉藤と太田では出せないキャラクターでしょう。
カッコつけてるのに、いまいちカッコが付かない、そのちぐはぐ感が笑えてくる。

また、太田のマッチョ感も、斉藤の巻き込まれ体質な感じもそれぞれが
バッチリ決まった良いコントだったと思います。
今まで私が見たジャングルポケット史上、一番笑いました。

 

設楽:90

日村:92

三村:90

大竹:93

松本:93

合計:458 (ファイナルステージ4位)

私:92

 

さらば青春の光

 

ネタは「パワースポットを守る警備員」。
今回のキングオブコントの中では、最も良い設定を持ってきてると思います。
このネタは以前、一回見たことがあったのですが、それでもやっぱり面白かった。
バナナマンのふたりも言っていましたが、この設定は非常に着眼点がすごい。
パワースポットを題材にネタを作ってくれって言って、この設定を持ち出せる人が何人いるのか。
そして、この強い設定に負けないくらい二人の演じ方も良かった。
ヒガシブクロ、森田共に間の取り方が絶妙ですよね。


「パワースポットですよね?」

「はい~すごいですよねぇ~」

の時の、微妙に食って入る感じなんかもう、そこしかない!って思います。
パワーが横からじゃなく、全面から出てる?からの、

「押さないでくださいね~~」

「浴びてるやん!!」

もタイミングが良い。
私も、「浴びてるやん!!」って思いましたもん。
もう純粋に、コントが面白いって感じましたね~。
自分がつけてた点数はそんなにぶっちぎってる訳じゃないんですけど、
これが完全に初見だったらもうちょい高かったかもしれません。
どうしても、一回見た印象が拭いきれなくて、その分が点数調整に入ってしまった。。

 

設楽:95

日村:97

三村:92

大竹:91

松本:92

合計:467 (ファイナルステージ3位)

私:90

 

かまいたち

 

今回、キングオブコントを制覇したかまいたち。
文句なしです。超おもしろかったです。優勝おめでとうございます。

ネタは「ウェットスーツが脱げない」。
シンプルなネタ設定であれだけパンチ力のある笑いが生み出せたのは、
ツッコミのキレが凄まじかったのと、絵面が面白かった点にあると思います。

「目処が付いてんねん!」

で、一気に会場の空気を掴んだ気がします。
その前段階から、ウェットスーツに苦しんでいる山内の姿と、
あたふたしている濱家の姿が、わちゃわちゃ感満載で笑えていたんですが、
やはりあそこで完全に会場の空気を変えましたね。

その後畳み掛けるように、ウェットスーツを脱がせようと山内を無理やり倒して
ウェットスーツを強引に引っ張る濱家。ゴンゴンぶつかる山内の膝。
そこで叫ぶ「膝割れる!!!!」も、鬼気迫った感じで、めっちゃ笑いました。
このシーンはずっと笑っちゃって、久しぶりにお腹がよじれたって感覚を味わいました。
いや~良いコントを見たなぁ。

 

設楽:94

日村:96

三村:95

大竹:97

松本:96

合計:478 (ファイナルステージ1位)

私:97

 

にゃんこスター

 

さて、ファーストステージではどデカいインパクトを残していったにゃんこスター。
ファイナルステージはどういう感じでくるのか・・・
ファーストステージのインパクトを超えるのはそうそう楽ではないぞ。どう来る?

そう思って見ていて、暗転している舞台が照らし出された瞬間浮かんでくるのが、
ファーストステージと全く一緒の始まり方という衝撃。

これはもう、完全にしてやられた。
正直、その発想はなかった。まさか、同じ形式のネタを二回やるとは。。
この時点で、にゃんこスターはもうキングオブコントという枠を飛び越してしまった気がする。
漫才だと、形式が似通っていてもそれは話し方見せ方、そもそもネタの題材で違いを見せられますが、
コントだと同じ設定のものを同じコンビがやるのは勇気がいります。
同じ設定と言っても、学校を舞台にしているとか、登場人物が一緒なだけで、
メインの笑いどころが違うということならば見れなくもないですが、
にゃんこスターの場合は、もう全く一緒。リズムなわとびがリズムフラフープになっただけ。

キングオブコントのファーストステージまでをフリとして使ったんじゃないか?
そんなことも想像させるようなネタのチョイス。
同じことを複数回繰り返すテンドンという技術を、あの大舞台でネタに使用したのは
これまでのキングオブコント史上初だったでしょう。
あの壮大な出落ちを見た瞬間、「こいつらはもう好きにやればいい」と思った。
「賞レースで順位を決めるとか、そういうことはもういい。あなた達は自分の道を進みなさい」という感情が芽生えた。
審査員の点数も、もはやあの出落ち感を審査しただけのような気がします。
でも、それでもいいのです。
まぁ、別に初めてのことをやったからと言って優勝できるわけではないのですが、
ファーストステージを超えるインパクトをある意味残せたのかもしれません。
だから、結果的に優勝はしなかったけど、「売り出されるのはにゃんこスター」なんてことが
まことしやか言われるんでしょうね。

とにかく、すごいコンビでした。

 

(追記:にゃんこスターの交際宣言が報じられましたが、まぁ何も言うまい。あくまで、ネタの感想なので。)

設楽:90

日村:92

三村:92

大竹:94

松本:94

合計:462 (ファイナルステージ2位)

私:93

 

総評

 

全体として、今年のキングオブコントもめっちゃ面白かったです!!
それに尽きる!!

 

芸人さんの画像はそれぞれ、下記よりお借りしました。

http://www.yoshimoto.co.jp/
http://grapecom.jp/
http://www.maseki.co.jp/
http://www.watanabepro.co.jp/
http://www.sarabaseisyunnohikari.com/schedule/44585/