交通系ICカードのフォロースルーの時間が異常に長い女
通勤電車の中には様々なストレスの要因がある。
汗臭い人、体が当たること、窮屈、そもそも会社(学校)に行くのがダルい。
しかし、多くの人々が自らに降りかかるストレスと戦って毎日を生きている。
だからこそ、俺は通勤電車の中では紳士でいたい。みんなが抱えるストレスが、少しでも和らいでくれたら俺はそれでいい。
肘打ち?してくれて構わない。そのために筋肉を鍛えた。
異臭?どうぞ放ってくれ。でも、あんまり近寄らないでくれ。
ただし、電車を降りたあとは話が別だ。
俺は怒っている。怒っているんだ。
ICカードをずっとくっつけてる女に怒っているんだ!!!!!!!
電車を降り、みんなが一定の距離を保ちながら改札へ向かう。
Pi Pi Pi Pi Pi
精算完了を告げる電子音が鳴り響く。
そこに突如、現れるんだ。
Pi Pi Pi Pi Piiii Pi Pi
おい!!!!
今なんか、ICカードをかざすフォロースルー長い奴いただろ!!!!!!!!!
5人目!!!!!
5人目のあんただよ!!!!!!
何が彼女たちをそこまで固執させるのだろうか。
恐らく、確実に精算を完了させたい。
断固、精算を終わらせなければならないという鉄の意思表示かと思われるが、あんなものはちょっとかざすだけでも反応してくれる。
俺はICカードの限界を知りたくて、立てる、速くする、遠くからかざす、様々な実験を勝手にしてきた。
結果、全部できた。
最近の技術の進化はすごい。
そのうちICカードじゃなくて手をかざすだけで通れるようになりそうだ。
改札はそこまで押し付けなくても反応はする。
だとすると、あのフォロースルーはなんなんだろうか??
別に「ベシンッ!」と押し付けている訳でもない。
ただ、「スゥーーー」と長めに当てている。
人は自分の常識の範囲を超えた人に出会った時、二つの反応に分かれる。
尊敬、もしくは畏怖だ。
俺は彼女たちを恐れた。
そのフォロースルーに何の意味があるのか。
俺だけが知らない秘密が隠されているんだろうか。その静止している肘からナイフが飛び出してくるんじゃないのか。改札ラッシュの流れの途中でどさくさに紛れて俺のことを刺し殺そうとする未来から送られてきた殺戮兵器なんじゃないのか…
俺は…彼女たちが…怖い…